日本脳卒中協会 創立25周年記念誌
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日本脳卒中協会理事・啓発委員会委員長岡村 智教 日本脳卒中協会の目的として、「脳卒中に関する正しい知識の普及及び社会啓発による予防の推進並びに脳卒中患者の自立と社会参加の促進を図り、もって国民の保健、福祉の向上に寄与すること」と記載されており、その意味で啓発委員会は協会の事業推進において中心的な役割を果たしている委員会と考えています。 啓発は多くの事業で成り立っていますが、設立当初から毎年冊子体として発行されているのが、脳卒中体験記「脳卒中後の私の人生」です。これは発病後に自分らしい生き方を目指して前向きに進む患者さんやご家族の人生に焦点を当てて、ご自身の励みとしていただくこと、また社会的関心を高めることを目的として行われてきました。近年のネット社会に適応して、同様の趣旨の「脳卒中体験者インタビュー」も協会のサイトで動画が公開されています。これは脳卒中体験者スピーカーズバンク事業として進められており、スピーカーは、体験記応募者や協会員の医師等が診察された患者さんに適宜お願いすることとしています。また日本脳卒中協会は、脳卒中に関する知識を広め、一般市民の脳卒中に関する理解を高めることを目的に、2002年から2020年までは毎年5月25〜31日を「脳卒中週間」として、2021年からは毎年10月を「脳卒中月間」として、集中的に啓発活動を行っています。さらに脳梗塞の重要な危険因子である心房細動の早期発見を目的として、市民に自分で脈をチェックすることを呼びかけるため、2014年に3月9日を「脈の日」(語呂合わせで、3(みゃ)月9(く)の日)として日本記念日協会に登録し、3月9日〜15日を心房細動週間として啓発活動を行っています。 脳卒中協会はいろいろな調査事業も行っています。科学的な知見を得るための事業としては、脳卒中の初発症状を市民に知ってもらい早期受診を促すブレインアタックキャンペーンがあります。チラシの全戸配布の効果(ASK研究)、テレビによる啓発効果(岡山NHKプロジェクト)は、研究成果が一流の国際誌(Stroke)に掲載されました。またこれらの成果を受け継いで行政と一緒に実施した栃木県脳卒中啓発プロジェクト、啓発内容を自己検脈にした鹿児島県脳卒中啓発プロジェクトも行われています。さらに患者さんやご家族の負担に焦点を当てた患者・家族委員会アンケート調査も行われ、「脳卒中を経験した当事者(患者・家族)の声」として報告書が発行されています。 現在、脳卒中・循環器疾患対策基本法の絡みで厚生労働省の「循環器病に関する普及開発事業」が協会に委託されており、国民向け、患者・家族向けという2つの視点で脳卒に関する正しい知識の普及啓発事業を、啓発委員会を中心に企画中です。この他、各支部で様々な独自の啓発活動をしておられますが、ここでは紙面の関係ですべてをご紹介できないのが残念です。日本脳卒中協会の目的の達成のために啓発委員会として引き続き鋭意努力していく所存です。是非、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。啓発委員会

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