日本脳卒中協会 創立25周年記念誌
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3.脳卒中相談窓口 新たな方向性に向けて2.rt-PA血栓溶解療法の普及と啓発活動1.2003年全国7番目の支部として誕生 日本脳卒中協会福岡県支部は2003年、全国7番目の都道府県支部として、福岡県福岡市の国立病院九州医療センター(現 国立病院機構九州医療センター)内に設置されました。手上げ方式で当時、協会理事長であった山口武典先生にお願いして、支部の委嘱状を発行していただいたことが懐かしく思い出されます。脳卒中の患者家族の支援をめざす公的組織は日本脳卒中協会のみといって良い状況でした。当時、日本脳卒中学会は脳卒中の病態解明、基礎研究、新たな薬物治療の開発などが主流であり、介護保険制度や回復期リハビリテーション施設が普及し始めたころで、医師が患者家族を直接支援する団体の活動や理念の浸透がまだ不十分な時代でした。その後、副支部長として九州医療センターの矢坂正弘先生、久留米大学脳神経外科の森岡基浩先生に加わっていただきました。 2005年10月、rt-PAが薬事承認され、脳梗塞発症早期に有効な治療があることを県民、市民に広く広報する必要がでてきました。福岡県支部では市民公開講座の開催に積極的に取り組みました。毎年5月の脳卒中週間には福岡市中央区天神エルガーラホールで欠かさず市民講座を開催し、また救急救命士を対象とした脳卒中病院前救護研修も、福岡県総務部防災危機管理局と共催で、これまで16回、延べ1000人以上の救急救命士に脳卒中救急の講習会を実施してきました。東日本大震災の年には「一過性脳虚血発作」をテーマとして700名の市民に公開講座を行い、寄付を被災地に届けました。2020年以降のコロナ禍でもオンライン講演を毎年継続しており、福岡県支部の市民啓発にかける情熱は今なお変わりません。 九州医療センターは日本脳卒中学会が認定する一次脳卒中センター(PSC)コア施設の委嘱を受け、今年は脳卒中相談窓口を開設しました。また全国10都道府県の脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業施設にも選定され、心臓病等とともに窓口を発展させています。患者さんの希望や悩みごとは医療者が考える問題とは異なるものが多く、医療サービスとの乖離を気づかされます。福岡県支部では今後も患者目線で充実した支援センターを目指したいと思います。 日本脳卒中協会は各都道府県庁所在地のほかに政令指定都市にも支部が存在します。北九州市支部も福岡県支部とは独立して2005年に設立されました。 北九州市はかつての四大工業地帯のひとつである北九州工業地帯の中心都市であり、1963年にわが国で7番目の政令指定都市になりました。その後いわゆる鉄冷えで街の活気は失われていきましたが隆盛を極めた時代の医療資源が現存しています。高度医療を提供する医療施設が多数存在し、各専門領域でわが国トップクラスの医療レベルを誇っています。そのため関東地方などから老後の終の住処として多くの方が転居して来られています。 北九州市の最大の問題点は少子高齢化率が政令指定都市では最も高いことです。心・脳血管系の合併症を発症する人も多いため北九州市支部は脳卒中の啓発活動を積極的に行っています。その中心的な活動が「脳卒中公開セミナー」です。コロナ禍で中止となった 2020年を除いて毎年開催しており、2022年は第17回目を10月に予定しています。第1回は2005年5月28日にウェルとばたで開催しました。テーマは「のがすな前触れ、早めの受診」でした。当時は市民公開講座自体がまだ一般的でなく、日本脳卒中協会が先鞭を切った感じでした。そのため全てが手探りの状態で開催しました。第2回から第5回までは小倉北区の国際会議場を使用しました。第6回からは現在も使用している北九州芸術劇場に会場を移しました。ここは商業地域の中心部でもあり来場者には好評です。 18年目を迎えた北九州市支部が市民講座を中心に活動を継続できているのも支部長である小倉記念病院永田泉先生を中心とした役員のチームワークが良いことが挙げられます。来たる超高齢化社会に向けてこれからも脳卒中医療レベルの向上に少しでも寄与できる様に活動を継続していきたいと考えています。北九州市支部 副支部長 高野 健太郎(高野内科クリニック)福岡県支部 支部長 岡田 靖

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