広島県支部は初代支部長 松本昌泰先生(広島大学脳神経内科名誉教授)のもと、2004年に第1回市民公開シンポジウムを開催しました。2016年からは栗栖薫先生(広島大学脳神経外科名誉教授)が引き継がれ、2022年より私が支部長を担当しています。2019年の会を最後にコロナ禍で中止が続いておりますが、近年では毎年150〜200名の参加者を得ています。初期の市民シンポジウムでは山口武典先生(前日本脳卒中協会理事長・国立循環器病センター名誉総長)が「人は血管とともに老いるー生活習慣病の恐ろしさー」という演題で、また峰松一夫先生(前国立循環器病センター病院長)が「急性脳梗塞に対する血栓溶解療法」という演題で特別講演をされました。支部会開設当初はブレインアタック時代と言われ、rt-PA静注療法、ストロークケアユニットなどをキーフレーズとして、早期発見と迅速な受診を促すための市民啓発・患者教育、救急搬送体制の整備、地域脳卒中診療ネットワークの構築などの社会的課題に取り組んできました。それからは話題によっては行政にも参加して頂いて、政策のご紹介をして頂いたり、一般参加者からの意見を直接聞いて頂いたりしてきました。また、協賛企業から健康関連製品の提供を頂いて、シンポジウムの最後に「お楽しみ抽選会」を行い、参加者に好評でした。大平哲也先生(現・福島県立医科大学疫学講座教授)を講師とした「笑ってストレス解消!脳卒中予防!」では会場内の受講者が「ワッハッハー!」と笑いヨガを実践する等、受講者の脳卒中に対する関心を高める工夫を凝らした会を継続してきました。広島県においては女性の健康寿命が日本で低位となっており、本会の意義がますます求められます。脳卒中予防から発症後の社会自立支援までの広い取り組みを進めて参ります。 山口県支部は2005年に鈴木倫保前支部長のもと山口大学脳神経外科に開設され、2011年からは山口大学神経内科、2013年から山口大学循環器内科の協力を得ながら活動をおこなって参りました。主な活動は市民公開講座、電話相談、開業医教育研修事業、ISLS/PSLSの定期開催です。 山口県は2022年現在総人口は約131万人(年々減少)、65歳以上の人口割合は約34%(第3位)、75歳以上の人口割合は約18%であり、全国でも進む高齢化社会を少し先を行っている状態と言えます。また山口県は日本海側(山陰側)、山間部、瀬戸内側(山陽側)の地域的に3つに分かれますが、総合病院の分布は山陽側に集中しています。さらに脳卒中専門医や脳神経外科医も山陽側に集中しており、山間部や山陰側にはほとんどいません。脳卒中発症のリスクが高い高齢者がとくに山間部、山陰の過疎地に多いため、そこへの脳卒中診療提供体制を構築することが山口県全体の課題の一つです。 山口県支部では打開策の一つが遠隔医療とDoc Heli搬送です。Doc Heliは2011年に山口大学構内に基地が設置されました。遠隔医療は、県内の脳卒中診療医がいない施設を中心に富士フイルムメディカル社と共同で開発した画像転送システムTelestroke Advance system: TELESAを使用し、脳卒中診療医がいない施設においてもrt-PA療法をサポートし、必要に応じてDoc Heliなどを使用した血栓回収実施施設への転送を行うことによって、全県の住民に脳卒中診療を提供する体制を作っています。 2018年の脳卒中循環器対策基本法の公布を受け、2019年7月に山口県脳卒中・循環器病対策推進委員会を組織し、その後、山口県循環器病対策推進協議会で十分な協議を行い2022年3月に山口県脳卒中・心臓病その他の循環器病対策推進計画を発表しています。この対策推進計画をもとに、脳卒中全県調査、ストロークプレホスピタルスケールの導入などによる県内の救急体制整備を行っています。脳卒中診療医だけでなくすべての領域の医師へアプローチを続け、全県住民への予防などの啓発、診療提供体制の充実、そして研究推進を行い、住民の健康増進のために役割を果たして行きたいと考えています。山口県支部 支部長 石原 秀行広島県支部 支部長 堀江 信貴支部長 石原 秀行
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