患者京都大学医学部附属病院長宮本 享 このたびは、日本脳卒中協会創立25周年誠におめでとうございます。創立以来、脳卒中に関する市民啓発活動を活発に継続されてきたことに心より敬意を表します。 さて、脳卒中・循環器病対策基本法の制定にむけては山口武典先生のリーダーシップのもとに日本脳卒中協会が熱意をもって活動されてきましたので、日本脳卒中学会もそれに協力してまいりました。関係各位のご尽力の甲斐あって2018年12月に同法が制定されました。その2年前の2016年12月に日本脳卒中学会と日本循環器学会が策定した「脳卒中と循環 2018年12月10日、睡魔と闘いながらインターネット国会中継を注視、脳卒中循環器病対策基本法の成立を見届け、感動のあまり寝付けなかった5年前の深夜を思い出します。脳卒中後遺症を持つ患者・家族の団体として、脳卒中協会の一員として、この10年余り、法案成立活動の紆余曲折を体感後の感慨は時別なものがありました。勿論、脳卒中協会の諸先生方は、さらなるご苦労があったと拝察しており、ありがたく、感謝に堪えません。 漸く成立した脳卒中循環器病対策基本法の中には、日本の歴史上はじめて「失語症」の文字が入り、今後、失語症のある人の生きづらさが少しでも解消していくことを信じ、願いな特定非営利活動法人日本失語症協議会理事長 園田 尚美器病克服5ヵ年計画」により、医療体制等の学会整備が進行していたことは、同法に基づいて循環器病対策推進基本計画が策定されるうえで、力強い推進エンジンとなりました。同計画を策定する循環器病対策推進協議会には、日本脳卒中協会の峰松一夫理事長と当時日本脳卒中学会理事長であった小生(現在は小笠原邦昭理事長に交代)がともに参画し、両団体は密接に連携して提言を行いました。急性期医療提供体制や登録事業については主に脳卒中学会から、脳卒中患者に対する啓発や相談支援については主に脳卒中協会からの提言がこの対策推進基本計画に活かされました。患者からの声に近く、受療者の立場から見た脳卒中医療のあるべき姿を提言する日本脳卒中協会と、全国の大学や医療機関と連携が深く、診療提供体制をあるべき姿に整備していく日本脳卒中学会が、しっかりタッグを組んで連携することにより、まさに車の両輪のように本 私は2004年9月の脳梗塞発症の約半年後に在職していた保険会社の社員向けに脳卒中セミナーを開催しました。まだ職場復帰間もない頃なのに何故、開催したかと言うと、発症後から抱いていた『脳卒中について何も知らなかったという不安と不満』を、脳卒中について経験したからこそ他の人にも伝えよう、という想いからでした。案の定、参加者は脳卒中について何も知らず終了後は皆さん満足感で一杯となりました。私はその後全国の支社を回り、社員に脳卒中の仕組み、予防法、対処法等がら、この5年の歳月を見守ってきていました。 2021年度(令和3年度)に出された東京都循環器病対策推進計画を見ていますと、失語症に対する具体的な施策について、ほとんど触れることがなく、患者・家族団体としては大変落胆をしています。総合的な相談支援の推進、在宅におけるリハビリテーションの取り組み、地域包括システムの構築等々、概要ばかりで、具体的な対策については一切記載されていません。失語症に関して言えば、すでに開始されている失語症者向け意思疎通支援者の養成を図るのみです。支援者派遣に関しても一言もありません。失語症者の生活の困難さは、意思疎通支援者がいれば改善するということではありません。附則第3条に書かれているように、「てんかん、失語症等の脳卒中の後遺症を有する者が適切な診断及び治療を受けること,並びにその社会参加の機会が確保され〜中略〜脳卒中の後遺症を有する者が社会生活を円滑に営むために必要な支援体制の整備等に川勝 弘之基本法制定に向けて
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