日本脳卒中協会 創立25周年記念誌
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  私が、脳卒中協会岡山支部長の時、2009年4月から2010年3月の1年に渡り、NHK岡山放送局と共同で、脳卒中防止キャンペーンを行いました。毎週水曜日夕方の岡山地方番組ニュースコア6岡山で、約10分ほど、脳卒中に係る番組を作成し放映されました、さらに、民放のコマーシャルのように、番組と番組の合間に流れるスポットを作成し月替わりで放映しました。NHK岡山支部の後藤氏と、番組の企画を話し合っていたことを懐かしく思います。当時、市民啓発に、テレビなどのマスメヂィアを用いることが有効であろう言われてたが、明らかなエビデンスはありませんでし小林病院理事長 島根大学名誉教授 日本医科大学 脳神経内科 た。そこで、この脳卒中防止キャンペーン介入前と介入後に、岡山市民に同じ内容で脳卒中知識調査を行い、介入前後で正解率が向上するかを調べることになりました。脳卒中防止キャンペーンを行わない隣県である広島県呉市において、同じように脳卒中知識調査を行い、岡山市と呉市で、脳卒中防止キャンペーンの効果を比較しました。キャンペーンエリア岡山市での介入後の調査では、参加者の約40%が「スポットをいくつか見た」と回答し、30%が「ハイライト番組を見た」と回答しました。 結果は、岡山市も呉市も、脳卒中の初期症状に関する知識正解率が向上が見られ(岡山: 前52.7%、後62.9%、呉: 前46.1%、後50.9%)、キャンペーンエリア岡山市は、介入後の回答正解率が改善しました。脳卒中の知識正解率が有意に改善したと言えます。テレビによる市民啓発が有効である初のエビデンスとなりました。この内容は、宮松先生がまとめSTROKE 誌に掲載されました。私の岡山時代の、懐かしい思い出です。 21世紀になる直前、島根県立中央病院脳外科から厚生省に入った上家技官が、注目されていなかった脳卒中を国の大型プロジェクト「健康日本21」に組み込み、国立循環器病センターの山口院長を座長とする委員会が始まりました。私も委員として参加しましたが日本の脳卒中臨床データの乏しさに愕然としました。この機会にPCによる急性期脳卒中データベース(DB)を作るべく科研費を取得し、峰松先生達と研究班を立ち上げてEBMに不可欠な病型分類、数値で評価できる重症度、予後評価基準を決め、「FilemakerPro」で手作りしたDBで約20施設の仲間と1999年に登録を開始しました。2003年に5000例をまとめて「脳卒中データバンク」第1号の出版に漕ぎ着けました。しかし科研が終わると折角の登録が継続出来なくなるので、脳卒中対策基本法に向けて立ち上がった脳卒中協会の山口会長から協会の調査研究部門という場所を頂き、その後も科研費を獲得しながら改訂と出版をしながら継続し、2015年には10万例以上をまとめることが出来ました。その実績のお陰で2015年には本来の目的である日本脳卒中DBとなるべく国立循環器病研究センターへの移管が完了しました。その後循環器病対策基本法も成立、脳卒中拠点病院整備などが進んでいます。しかし、がん対策基本法に比してデータ登録事業が弱いと思います。脳卒中克服5ヵ年計画を立てても具体的な数値でその成果を評価出来なければ意味がありません。脳卒中DBは国循で着実に進歩を遂げ登録も数倍になり研究を世界に発信してくれてうれしい限りですが、是非この基本法の中で臨床検証部門としての地位を確立して頂きたいと思います。そのためにも脳卒中協会の益々の発展を期待しています。NHK岡山放送局+岡山支部の脳卒中防止キャンペーン脳卒中データバンクの立ち上げ小林 祥泰木村 和美

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