日本脳卒中協会 創立25周年記念誌
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慶應義塾大学環境情報学部秋山 美紀 日本脳卒中協会「患者・家族委員会」の皆さんと、脳卒中経験者のニーズを把握するためのアンケート調査を実施し、2020年7月に報告書を取りまとめました。その分析や作成のプロセスは、私にとって貴重な学びの機会になりました。 アンケートを実施した2019年5月は、循環器病対策基本法が成立し、1年以内に推進基本計画の議論が始まろうとしている頃でした。脳卒中を経験した様々な人が、安心感と充実感を持って生きていけるような施策は、患者・家族委員会のメンバー全員の悲願でした。脳卒中の症状や後遺症は個別性が高く、ニーズは多岐にわたりますが、治療を経て地域生活に復帰した患者が、具体的にどんな困難を経験しており、どのような支援や情報を求めているのか、それまで全国的な調査が行われたことはありませんでした。 私たちは全国の患者会を通じて質問紙を配布し、31の都府県に住む567名の方々から回答をご返送いただきました。質問紙の自由記載欄には、退院後のご苦労や医療・行政サービスへの要望がビッシリ書かれた回答が何通もあり、患者さんやご家族がどれだけ困っており、声を伝えたいと思っているのかを痛感しました。分析の結果、(1)治療や制度が分化されており一貫した支援が得にくい、(2)地域生活におけるリハビリテーションやケアが十分でない、(3)働くことへの支援が不足している、(4)失語症という後遺症に対する支援や理解が不足している、(5)脳卒中に対する社会の理解が不足している、という5点の課題が浮き彫りになりました。 報告書作成にあたって、患者・家族委員会のメンバーで議論しながら、伝えたいこと図にまとめました。これを、メンバーで循環器病対策推進協議会委員でもあった川勝弘之さんが、審議の参考資料として厚生労働省に提出してくだいました。制度を動かすためには、エビデンスが必要です。当事者視点のデビデンスは、医療の専門家や研究者のみでなく、当事者とともにつくることが重要だと思います。より良い医療や社会をつくっていくための協働にこれからも関わっていきたいと思います。―患者・家族委員会アンケート調査より―脳卒中当事者の声を政策に伝える患者支援事業 

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