テーマ司会 2018年に、脳卒中・循環器病対策基本法という法律が成立いたしました。これはどのこのような法律なのでしょうか。中山 国を挙げて脳卒中、心臓病対策を進めるための基本法です。国会が政府に対して一定の公的政策戦略を示し、それをしなさいということを命ずるためのものです。そのことによって、脳卒中が最大の原因である寝たきりを減らし、患者さんの健康寿命を延ばす、そして医療や介護の負担を軽減する、これがこの法律の柱です。具体的な内容としては8つ挙げられています。つまり、予防、救急搬送と救急対応、医療機関の整備、患者さんの生活の質と人生の質の改善、保健・医療・福祉の連携、人材育成、情報の収集提供と相談支援の推進、そして最後に研究の推進、この8つです。司会 この法律の必要性はどんなところにあったのでしょうか。山口 がん対策基本法が成立したあと、いろいろな面で患者さんに役に立つようなことが、国として実施していくという実態がありました。そして、それならば、脳卒中に関しても、きっちりとした対策を、国を挙げてやってもらわなきゃいけないという思いがありました。実際に、何もないのに比べたら、格段にいろいろな政策が取られていくことになっていくという意味から、絶対に必要なことであったと思っていますし、非常にうれしく思います。司会 脳卒中・循環器病対策基本法によって、日本脳卒中協会のこれからの活動も変化をしていくということですね。峰松 変化していくだろうと期待はしていますが、まだ作業が遅れています。また厚生労働省の協議会においても、医療体制の話や研究の話が多く、我々が一番問題にしている、啓発や病気の知識普及や、患者さんが何を本当に困っているのかという視点が非常に弱いのです。それと、この協議会の開催自体が、コロナが始まった時に完全に重なってしまって、協議会の回数も減らされ、時期も予定よりかなり遅れています。ただ、いろいろな動きも出始めています。従来、日本脳卒中協会がやってきた脳卒中のデータベース事業が、国立循環器病研究センターが実施主体となることが決定されました。また、これまでばらばらだった関連団体の代表を集めて、日本脳卒中医療・ケア従事者連合の活動も始まりました。そういったことも、この法律ができたことの影響と考えます。峰松 一夫3脳卒中・循環器病対策基本法について
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